コラム|営業

成長ドライバーとは:営業生産性を前年比160%にした見つけ方

社名の由来でもある「成長ドライバー」の解説。用語の説明は短く、本題は、上場の建設テックSaaS企業で執行役員として営業を改革したとき、成長ドライバーをどう見つけ、どうKPIに落とし込んだかの実践記録。

執筆:三浦慶介(株式会社グロースドライバー 代表取締役)

成長ドライバーとは

成長ドライバー(収益ドライバー)とは、事業の成長や収益を、実際に動かしている要因のことです。

売上は「顧客数×単価×継続率」のように分解できます。ドライバーツリーと呼ばれる分解の図です。ただ、分解して出てきた要素がすべてドライバーになるわけではありません。動かしたときに成果が大きく変わる、ごく少数の要素だけが、本当の成長ドライバーです。

私は、これをKPIの形にしたものを「ドライバーKPI」と呼んでいます。条件は3つあります。

  • 質の要素を含む:「商談数」ではなく「狙った顧客との商談数」のように、成果を左右する質が入っている
  • 行動で変えられる:売上や成約率のような結果ではなく、行動で動かせる
  • 成果を本質的に左右する:動かすと成果が桁違いに変わる

社名の由来も「成長ドライバー」

私が代表を務める株式会社グロースドライバーの社名は、この「成長ドライバー(growth driver)」から取りました。事業の成長を本当に動かしている要因を見つけ、そこに力を集めて動かす。事業会社の中で成果を出してきたときに繰り返してきたこの仕事を、そのまま社名にしています。

ここからは、私が実際に成長ドライバーを見つけ、KPIに落とし込んだ実践の記録です。

実践1:上場SaaSの営業改革で見つけたドライバー

上場の建設テックSaaS企業で、執行役員として営業改革を担ったときの話です。

着手したときの状態

営業目標の未達が続き、未達の分が次の期に積み増される悪循環にありました。組織は「とにかく商談数」を追っていましたが、商談数は足りているのに成約率が足りず、未達になる月が続いていました。量を増やすほど、1件ごとの質が落ちていたのです。

SFA(営業支援システム)も「とりあえず記録させている」状態でした。成約した商談を後から登録する慣行があり、成約率すら正しく測れていませんでした。

最初にしたこと:60点で走り出す

完璧な戦略を待たず、「誰に、何を、いくらで、どう売るか」を言葉にして動き出しました。使われていなかったSFAは2か月で入れ替え、成約率を正しく測れる記録に変えました。成長ドライバーを見つけるには、検証できるデータが先に要るからです。

違和感:売っているものが違った

組織が回り始めてから、北海道から鹿児島まで営業に同行しました。そこで見えたのは、すでにどこにでもある機能ばかりを提案していて、他社にない機能を提案できていない、ということでした。一方で、その他社にない機能を強く支持している顧客が、一定数いました。

ドライバーの見極め:単品売りからパッケージへ

他社にない機能をまとめたパッケージ提案に切り替えました。現場からは「そんな金額では売れない」という声もありましたが、成約率は下がらず、新規の受注単価は約3倍になりました。

ここで、この事業の成長ドライバーがはっきりしました。「どれだけ商談したか」ではなく、「パッケージを使いこなせそうな顧客に、どれだけパッケージを提案したか」です。

KPIへの落とし込み:部門ごとに、一本につなげる

  • 新規営業:高単価パッケージの提案総量
  • 既存営業:受注確度50%以上の商談の提案総量(どの条件がそろうと受注しやすいかを検証して決めた)
  • カスタマーサクセス:上位機能の活用支援の実施回数(それまでは「勉強会の開催回数」だった)

カスタマーサクセスが活用の進んだ顧客を増やし、営業がその顧客に確度の高い提案を増やす。部門ごとにばらばらだったKPIが、一本につながりました。

やってみて分かった落とし穴

KPIを決めて1週間ほど様子を見ると、狙った顧客へのアポ数に、チームによって2〜3倍の差が出ました。話を聞くと「どうアポを取ればいいか分からない」という答えでした。指標を変えても、それを動かす力が組織になければ動きません。

そこで、私自身が商談や飛び込み営業に同行してやって見せ、週2時間ほどの営業研修を続けました。人事評価も「売上達成率だけ」から、KPI(行動)の達成も評価する形に変えています。売上が未達でも、正しい行動をした人が評価され、昇進する組織にしたのです。

結果として、営業生産性は前年比160%になりました。

実践2:大手商業施設で見つけた「主要顧客」というドライバー

もう一つ、マーケティングの事例を挙げます。大手商業施設で、会員の購買データを機械学習で分析し、「誰が、どんな買い方をしているか」で顧客を分けました。

分かったのは、売上を支えているのは、限られた主要顧客の群だということでした。この施設の成長ドライバーは、会員全体の数ではなく、主要顧客が離れずに来続けることだったのです。そこで、主要顧客の離脱の兆しを捉えて個別に引き止める施策に集中し、年10億円超の利益創出につながりました。

成長ドライバーの見つけ方:3つのステップ

2つの実践から、見つけ方は次の3つにまとまります。

  1. 現状を疑う:「管理しているのに未達」「量を増やしても伸びない」は、追っている指標がずれているサイン。量で取り返そうとする前に、指標を疑う。
  2. 良い顧客と良い行動を、データで見極める:売上を支えている顧客は誰か(売上の大半を少数の顧客がつくっていることはよくある)。その顧客から受注できたとき、何をしていたか。成功体験から逆算する。
  3. 一部で検証してから、全体に広げる:見つけたドライバーはまだ仮説。一部のチームで試し、成果が出たものだけを組織の共通KPIにする。

よくある間違い

  • 結果の指標を目標にする:「売上を伸ばせ」「成約率を上げろ」は結果。現場は何をすればいいか分からない。
  • 量だけを増やす:商談数やリード数を積み増すと、多くの場合、1件ごとの質が落ちる。
  • すべての顧客に同じ力をかける:成果への影響が3倍違う顧客にも、同じ時間を使ってしまう。
  • 挑戦した人を評価しない:前例どおりでギリギリ未達の人と、挑戦して大きく外した人。達成率だけで評価すると、誰も現状を疑わなくなる。

成長ドライバーは、見つけて終わりではありません。指標を決めたことで、腹をくくってやり切れるようになる。それが何よりの成果だったと、実践して感じています。

自社の追っている指標が、結果の数字になっていないか。まずはそこから見直してみてください。

この記事を書いた人

三浦慶介

三浦慶介代表取締役

事業会社で執行役員・責任者として、営業・マーケティング・新規事業の成果を出してきた。

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